この季節(3月初め)となると、卒業式に携行するカメラが気になります(私だけであろうか?)。私は三人の子どもがいるので、それこそ数々の卒業式に参列してきました。近年、父親が卒業式に参列しないことは、近所の奥様方からの評価に関わる重大事項であり、入学式をキャンセルしても結構やばいのに、卒業式をミスすると、悔恨のミスとなります。
卒業式のセレモニーは、いくつかのフェーズというか、シーンが存在します。1.式が始まる前の会場(大抵は体育館)の状況。2.式が始まった時の、卒業生の入場。3.校長先生の挨拶など。4.卒業証書授与式。5.在校生からのメッセージ。6.卒業生から送ることば。7.卒業生の退場。8.体育館より外での卒業生の行進(近年のオプション)。9.子どもたちとの記念写真。
親たちの感動は、前記の8のフェーズで最高潮に達します。卒業生の行進は時には、保護者の同行もあるので、卒業する子どもと歩きながら、在校生の温かい拍手に包まれるたびに、子どもとの思い出が蘇って、竹内まりあの、「家(うち)に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」のPVが去来して、目頭が熱くなってしまいます。
話を本題に戻します。卒業式のセレモニーを記録に残す場合において、ベストのカメラ、あるいはビデオカメラを考察することは、皆さんの今後のセレモニー参加に、少しだけお役に立てると思います。結論から言うと、ビデオカメラが、ベタではあるのだが、ベストのカメラであろうと思います。以下に、その理由を説明したいと思います。
卒業式をスマートフォンで撮影する方は、子どもの表情を的確に捉えられません。それは、レンズの倍率が低すぎることが原因です。もしくは、センサーサイズが小さすぎることに由来します。レンズの倍率。そこそこのスマートフォンは大体3倍程度。iPhoneの良い機種で標準で3から5倍、デジタルズームを使うと15倍くらい。子どもの表情を、体育館のような広いスペースで撮影するには、おそらく20倍程度のレンズが必要です。
センサーサイズ。これは、光を多く取り込むための必須要件です。体育館のような空間には、カクテル光線の照明、あるいは今時ではLEDの照明が天井に設置されていると思いますが、天井は高く、光量が十分ではありません。かといって子どもたちの顔にスポットライトが当たるわけでもなく、どうしても、好感度のセンサーサイズを持ったカメラ、あるいは、光を多く取り込めるレンズが必要となります。
ビデオカメラは、そこそこのセンサーサイズと、レンズの光を取り込む性能を両立したカメラであり、子どもの表情を捉えるのには最適なカメラだと思います。ここでもう一つ重要なのは、高倍率のズームを行った時の「手ぶれ」。高倍率にすればするほど、手で持って撮影した時に、手が左右上下に振られた時の、画像のぶれが気になってきます。皆さんは、重いものを持った時に手が震えた体験をしたことがあると思いますが、カメラやスマートフォンを持った際に、少なからず、手は震えます。
手ぶれ補正は、手が震えた方向とは逆の方向に、レンズ、あるいはセンサー(受光素子)を動かす仕組みであるのですが、この機構をカメラに、物理的に組み込むには、それなりの空間が必要となります。
スマートフォンの手ぶれ補正は、大きく分けて物理的な補正と、ソフトウェアによる補正があります。物理的な補正は、先述の通りレンズや受光素子を動かす方法。ソフトウェアによる補正は、受光素子で受け取った画像に対して、補正を行って見かけ上の画像のブレを減らす方法。
iPhoneやGoogleのPixel(iPhoneは一般名詞化したので、Apple社の、とは言いません)は、ソフトウェアによるブレ補正が格段に進歩して、GoProに迫る補正が可能になりました。レンズの性能も格段に上がり、物理的なブレ補正を、小さい筐体内に組み込むほどに技術が進歩しました。
とはいえ、スマートフォンとビデオカメラの体積の違いは格段であり、結局、ビデオカメラに精緻な手ぶれ補正やソフトウェアによる手ぶれ補正を組み込むことは、スマートフォンと比べ容易なのです。
音響については、別の項で書きたいと思いますが、マイクの性能も重要です。iPhoneなら、大抵のシーンはしっかりと収録できますが、ビデオカメラの余裕のあるマイク設計はiPhoneを凌ぐ性能を叩き出すこともあります。
この動画、というか音声は、ビデオカメラと、ZOOMのマイクで収録したと記憶しています。ビデオカメラで撮影し編集したバージョンは、個人情報が豊富なのでここには載せませんが、結構感動的な仕上がりとなっています。
あとは、画像の安定性。手ぶれ補正もそうですが、子どもを追うためにカメラの角度を頻繁に変える際には、画像がブレたり、子どもの顔を追いきれなくなり、フレームアウトすることもあります。スマートフォンを手持ちで撮影する際に、高倍率で子どもの顔を追えたとしても、次のシーンで子どもがフレームアウト(子どもが画面から外れてしまうこと)することもあります。ビデオカメラは、子どもを追うためのハンドリング性能に優れております。三脚に簡単に設置することができるので、さらに安定したフレーミングを行うことができます。
カメラのフレーミング、子どもを常にフレームの中に収めるテクニック、音を拾う性能などを総合すると、やはりビデオカメラが有能ではないかと思います。ビデオカメラ、20万円以上するビデオカメラをアマチュアが使うことの有用性は、別の項で語りたいと思います。ポイントは、三脚とフルード雲台です。冒頭の動画が、そのノウハウとなります。