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がん治療に直面する戸惑いと医師が何を見ているのかに関する考察

親ががんに罹り治療をしている状況に直面して、がんについての勉強を行なっている。どちらかというと、がんの予防ではなく、治療に関する勉強なので、がんは化学療法、物理的な除去、放射線による除去、その他諸々の手段で、がんを消し去るといった治療法に触れる。

がんの治療効果は血液検査に現れ、親のケースでは可溶性インターロイキン-2レセプター、白血球数、血小板が主なパラメータとなり、がんの治療効果を可視化することができる。しかしながら、数値が改善された際には、親の髪が抜け、体重が極端に減少している状態については言及がなく、本人が、治療による副作用に驚愕していた。

がんの化学療法は、数多のトライアルアンドエラーにより(ネズミやヒトなど)獲得されたノウハウであり、数々の論文により研究者や医師の間で共有された情報である。これら情報により、がんにかかった人々は、治療によりがんを克服してきた。

しかし、医師との面談を重ねる度に違和感を持つ。治療効果について、血液検査の数値のみを見て、治療した人のことをあまり見ていないこと。親の入院している病院には、毎日のように患者が入れ替わり、医師も看護師も、リハビリの人も、休む暇なく働いている。新型コロナウィルス後、ますます患者が増えたかどうか知らないが、病院の忙しさにいっそう拍車がかかっているように見える。そんな中では、患者の治療は、システマチックに行わなければ、膨大な患者を捌くことができないとは理解できる。

しかし、医師はデータを見るのではなく、患者を見るべきかと思う。私はエンジニアであり製造現場とともにして仕事してきたが、業務はデスクワークがほとんどであるが、現場を見ずして製造業は務まらないと思っている。データだけでは分からないことが多く、現場で起こる事象を自分の目で見てこそのエンジニアだと考え、30年近く現場を見てきた。

ブルーバックスの本は、がん治療に関するさまざまな知識を与えてくれる。『免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか』(坂口志文、塚﨑朝子)は、書かれている内容の殆どは、この百倍近くの文献を読まないと真の理解を得られない本であるが、現在親が受けている治療の科学的な裏付けに肉薄できるような知識を提供してくれる。本書には、著者の経歴や研究者としての挫折など、人間ドラマ的な情報も提供してくれるので、読んでいて飽きることがないが、私の勝手な印象として、著者は、人の命を多く救うといった使命は持っていると思うのだが、最終的に研究成果の恩恵を得る患者についての想像は、あまり深く持っていない印象を持った。

本書を読んだ時の違和感は、ある防衛医大の先生と対面した時も得た感触であり、医療行為を行う目的が、どこかに飛んでしまった印象を得て、この時の印象は、私の仕事を行なっている際にも、真の目的がどこかに飛んでしまったかのような事象が数々見られることもあり、私自身も、社会に貢献する役割について考える機会となった。

私の親も、配偶者ががん治療を行っている姿を見て、自分ががんに罹ったら、がん治療は行わないといっていたが、結局のところ、がん治療を受けている。私はその姿を見て、自分ががんに罹ったら、がん治療を行わない決意を固めているが、いざ私が医師からがんを宣告されたら、自分もがん治療を受けるのだろうかと思いを巡らせてしまう。

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