ジュラルミンのスーツケースやアタッシュケースは、昭和生まれの私にとっては、旅する大人の憧れの鞄だった。航空会社でもらったステッカー、訪れた場所で買ったステッカー、保安検査が終わった後のシールなど、旅するごとにステッカーが貼られたジュラルミンケース。旅するごとに傷がつくジュラルミンケース。使うごとに愛着が増す魅力が、ジュラルミンケースにはある。

リモワは、ゼロハリバートンの次に購入したジュラルミンケースであり、細かいリブ加工がデザインのポイントとなっている。ゼロハリバートンより肉薄のジュラルミンなので、すぐに凹んでしまうのだが、預け入れ荷物にしなければ、凹まずに美しい姿を保ってくれる。リモワのアタッシュケースは20年ほど前に購入して旅行にも使っていたが、ほとんどの期間を家の中で保管されることとなり、少し前にメルカリに出品した。

リモワもゼロハリバートンも、ケースの素材をジュラルミンからポリカーボネートに広げてから、ケースの重量は軽くなったのだが、ブランドとしての魅力があせてしまった。リモワのポリカーボネート製キャビントロリーは、取り扱いがしやすく宿泊出張や帰省によく使ったのだが、内張が剥がれやすく、ケースの作りこみが、おろそかな印象を得ていた。しかしながら、歳をとるにつれ、軽さが正義となってきて、ジュラルミンケースを運搬するのがキツくなった。

リモワの産地であるドイツのケルンに、リモワのシルバーインテグラル・キャビントロリーを持って行った時は、ケースを里帰りさせた気分になった。このケースをペナンの空港で預け入れ荷物にした際は、ケースを日本で受け取った時、派手にケースが凹んでいたのを苦々しい思いで見ていた。この時に貼られた、保安検査後のシールは、少しの間貼ったままにしておいた。このキャビントロリーは、フランクフルト空港からプロペラ機にて移動する時にも活躍して、その際に日本では聞いたことのない航空会社でもらったステッカーを、後生大事に貼っていた。このプロペラ機には、イタリア人と思しき学生たちが乗り込んでいて、離陸時に大騒ぎしていたり、着陸時に拍手したりと、とても賑やかであったことを覚えている。

シールといえば、ジュラルミンケースを持ち出した最初の頃は、シールをベタベタ貼るのが好きだったが、最後の頃は、シールを貼らず、ジュラルミン表面の傷を愛でるのが、美しいと思うようになった。シールはいちいち剥がしていた。先のシルバーインテグラルをメルカリに出品する時には、プロペラ機の機体がデザインされたステッカーを剥がそうとしたが、後ろ髪を引かれる思いとなり、結局剥がさずに出品した。今頃も、どこかで活躍しているであろう。

そして今は、リモワは全て手放し、ジュラルミンケースは、ゼロハリバートンのスーツケースのみとなってしまった。このスーツケースは、まだ海外旅行に行くプランのないまま、30年近く前に購入して、その後すぐに、海外の長期出張を行う機会を得て、その後かなりの回数海外に連れて行った。この件は別の項で書いたと思うが、また記憶を呼び起こして、書いてみたいと思う。

投稿者 junjitee

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