私はなぜか、万年筆はPILOTと決めることとなった。インクは、コンバーターを使って自由に選べるので、別にインクカートリッジの制約があるわけではない。なぜか、PILOTを選ぶこととなった。PILOTを選ぶ前は、MONT BLANCを愛用していたので、若干過激な方向転換かもしれないが、なぜかPILOTが性に合っていると感じるようになった。PILOTを見直すきっかけはkakunoなる、子ども用万年筆であった。
この万年筆を選んだ理由は、「トラベラーズノート」のパスポートサイズをデータベース化しようとした際に、限られたスペースに細かい文字をかける筆記具を探して、偶然見つけたからであった。筆記具は色々と試して、ボールペン、インクペン、シャープペンシルなどを検討したが、結論として万年筆が残った。「掠れず、滲まず」インクが適度に紙に乗り、かつインクが出過ぎないフローを実現したのが、PILOTのkakunoであった。
ここで、極細(EF)の存在を知り、好んでEFを使用した。3.5mm方眼の、バインデックスのリフィルにも無理なく書けて、何よりも滲まないのがよく、トラベラーズノートへの書き心地も良いので重宝した。トラベラーズノートのペン挿しにつけて、常時携帯するようになった。
しかしながら、この万年筆は、書き心地やインクの乗りはとても良かったのであるが、いかんせん、安価な万年筆なので、インクの漏れがひどかった。キャップは写真の通り、透明なものがブルーブラックのインクで青くなっている。かなりの頻度で手が汚れる。なので、少し高い万年筆を選ぶこととした。
そして本日到着した「エラボー」24,450円なり。ここに到達する前に、もう一本の万年筆を購入していたが、これは後述する。「エラボー」は1978年に開発され、日本の文字の特徴である「とめ」、「はね」、「はらい」を美しく書くことができるとのこと。まるで筆を使うかのように万年筆を扱う。50年近く前に開発された万年筆の思想は、今でも息づいていることを感じた。
気になっていたのはネジの材質。右は「エラボー」、左は「GRANCE」で、価格は「エラボー」が3倍くらいしたのだが、約8,000円の「GRANCE」では、ネジが金属で構成されているのに比べ、「エラボー」はプラスチックであったのには驚いた。その分、ペン先にコストがかかっていることは解るのであるが、何となく納得いかないモヤモヤ感がある。ただしこの「GRANCE」は現在販売されているバージョンではないらしいことに気づく。メーカーのホームページには、シルバーの金具が使われていないからだ。
文字は、2mmの方眼にも書けるほどの出来栄えだ。もちろん、素晴らしい紙との相性があるので、ここまでの細かい文字を筆記できているのであるが、「PLOTTER」の紙は伊達ではないと思った。薄い紙なのに、裏移りしない。素晴らしい紙である。
「エラボー」の特徴である、日本の文字を書くための、ペン先のしなやかさ。これは私にとっては、習熟に時間がかかる、癖のあるペン先である。ペン先を立てて書くと、しなりが軽減されるので、より細かい字を書くときには、万年筆を立てて書こうと思う。
文字を書くときのバランスは良いが、私はキャップをささずに使っている。細かい字を書くのが目的なので、ペンのコントロールがしやすいように、重心はなるべく下方に設定したい。1万円弱の追加で、ボディーが金属のタイプを購入する選択もあったが、携帯時の重さを考えると、プラスチックのボディーでよかったかと思う。
EFの極細ペン先は、速記には向いておらず、細かい字をじっくりと書く記録形式に適している。なので仕事では、打ち合わせの時には使用せず、打ち合わせのサマリーや、スケジュール帳に予定を記載するとき、データベースを紙に構築するときに使っている。
今更なのだが、製品に「JAPAN」と書かれていると嬉しい。近年、海外で生産する物が多いのであるが、この製品は「JAPAN」が銘打たれている。もちろん中間製品は外国で生産されている可能性があるものの、いつまでもPILOTの万年筆には「JAPAN」の文字を刻んていて欲しいと思った。