本日何気なくみていたスマートフォンの画面に『解体屋ゲン』なる漫画が出てきて、思わずKindleで15巻まで購入してしまった。もちろん、中身も見ずしてである。この手の劇画調のタッチの漫画は、『漫画ゴラク』や、今では電車内で広げられないような、スポーツ新聞に連載されていることが多かったと記憶するが、この漫画は『週刊漫画TIMES』に連載されているらしい。1話読んでこの漫画の世界観に引き込まれたが、どこまでこのモチベーションが続くかは見ものである。
『解体屋ゲン』が紹介されていたWEBページには、社会問題を扱った漫画でも炎上しない旨の投稿があったが、本書の第1話を読んだだけで、いかにも昭和チックな表現と、令和の現在においてはコンプライアンス的にNGになりそうな表現があり、思わず、志村けんの昭和のコントを思い出した。
『解体屋ゲン』の主人公である、爆破屋のゲンさんは、一匹オオカミの工務店の代表で、かつては海外で仕事をしていたらしい。日本では、プレハブ小屋を構えており、そこには毎回、美人の依頼主が現れて難しい仕事を注文する。これはまるで、フィリップ・マーロウのような稼業である(フィリップ・マーロウがどんな人か知らぬ方は、Googleや私の以前の投稿をご確認いただきたい)。
確かに『解体屋ゲン』で扱うテーマは、医療の問題、環境問題、テロ、ビルの爆破(9.11を想起させる)、文化財の保存、技術継承など、社会問題的なテーマが多い。しかし、確かに誰を怒らせることもなさそうな漫画である。フェミニストを除けば。
第2巻からは、ゲンさんに仲間が入ってくる。まるで『七人の侍』のように。以降、次々と仲間がゲンさんの元に集まってくる。この物語は、社会派漫画兼、友情漫画だ。
人間関係についてのもう一冊の本。『ハマの帝王』。「横浜をつくった男 藤木幸夫」というキャッチフレーズが、氏の写真とともに凄みを利かせている。横浜の港湾作業士からキャリアを開始した氏が、IR整備推進法、カジノの誘致に断固反対するシーンから、この本は始まっていく。氏のキャリア、大成する姿、任侠との交わり、有名人や政治家とのつながりなど、令和の現在においても連綿と続く人間同士の関係性について、考える機会を与えてくれた本。
本書には、著者の大下英治さんによる、緻密な取材と、泥臭い文体が紙面を踊り、いつもながらに、氏の描いた人間ドラマに引き込まれれる。実はまだ半分以上読んだくらいの進捗だが、その間に登場した人物、長嶋茂雄、田岡一雄、岸信介、中曽根康弘、河野一郎、ミッキー安川・・・これらがサラリと登場するので、消化不良を起こしているところだ。
これら2つの人間ドラマは、いずれも昭和育ちの男には、グサリと刺さる。決してノスタルジーではなく、「あるべき姿」を追い求めた時に、紙面(あるいは画面)に映し出される、ロールモデルとなる男(時には女)が活躍している姿を、読んだり眺めるのが、混迷を極める現代における、一つの拠り所となっている。